映画『アメリカン・ビューティー』あらすじ・解説・レビュー

こんな方へ
・社会に合わせることを窮屈に感じている人
・自分を見失いかけている人
・何かに怒りや憤りを感じている人
〔 こんな方は控えてください… 〕
・17歳以下 ※R指定の作品です
・精神的に追い込まれている人
本サイトでは気分や目的別にカテゴリー分けをして作品をご紹介してします。他の作品も是非ご覧下さい

作品情報・あらすじ
- 作品名(原題):アメリカン・ビューティー(AMERICAN BEAUTY)
- 制作年度:1999年
- 上映時間:117分
- 監督(制作国):サム・メンデス(アメリカ)
- 主な受賞歴:アカデミー賞(作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞・撮影賞)
見栄えだけの仮面家族が繰り広げる欲望と崩壊の物語
“僕はレスター・バーナム。ここが僕の住む町。ここが僕の通り。これが僕の生活。今年42才で、1年たたぬうちに僕は死ぬ。そんなこと今は知らない。ある意味で僕はもう死んでた。見てくれ、シャワーでシゴいてる。これが1日で最高の時。あとは地獄へ一直線。
「アメリカン・ビューティー」レスター・バーナムセリフ 一部省略
女房のキャロリン。植木バサミの柄とサンダルがマッチしてる。偶然ではない。彼女を見てるだけで疲れてくる。昔は幸せそうだったのに。幸せな夫婦だった。
娘のジェーン 一人娘だ。典型的なティーンエージャー。怒りに満ち、情緒的不安と混乱。”今だけだ”と言ってやりたいがそれは嘘になる。
2人とも僕を”人生の敗残者”だと。それは正しい 僕は何かを失った。”何を?”と聞かれると困るが、昔はこんなじゃなかった。この脱力感。しかし、今からでも元に戻れる。“
物語は、大手広告代理店に勤める中年男、レスター・バーナムの回想によって始まる。
彼は妻のキャロライン、一人娘の高校生ジェーンと3人で、大きな一軒家に暮らしている。アメリカン・ビューティー(真紅のバラ)に囲まれ、外から見れば“リア充”な生活を送っているレスターだったが、実は多くの問題と悩みにさらされていた
長年勤め続けていた会社では解雇の影をちらつかせられ、上昇志向の高い妻とは仮面夫婦で毎日のように強い口調で説き伏せられる。思春期真っ只中の愛娘とは口もきいてもらえないような状態だった。「ある意味で僕はもう死んでた」というように、華やかに見える彼の生活は闇ばかり抱えた不幸そのものだった。
そんな中、レスターを変える出来事がおきる。
ある日、チアリーディングをする娘の姿を見るため、妻のキャロリンがレスターを学校に連れ出す。しかし、レスターは娘のダンスよりも、娘と一緒にダンスをしている美少女アンジェラの姿にくぎ付けになり、卑猥な妄想で頭がいっぱいになる。まさか父親が遥かに年の離れた自分の友達にメロメロになるとは、ジェーンは呆れ果てる。
そんなジェーンのことも気にもとめずにアンジェラに夢中になるレスターは、家に遊びに来たアンジェラの会話を盗み聞きし、彼女は筋肉質な男性を好きだということを知った。するとレスター狂ったように肉体改造をし始め、筋肉だけでなく自信を身に着け、仕事でも家庭でも強気になる。
高圧的なキャロリンは高圧的に説き伏せ、解雇をちらつかせてきた会社へは重役の不正を突き付けることで大金と引き換えに自ら辞職。プレッシャーも責任もないハンバーガー屋に転職する。
アンジェラへの卑猥な想いをきっかけに、力強い肉体、気楽な生活、強い精神と充実した気持ちさえも手にしたレスターだったが、自己中心的にしか行動をしない彼は負のループを巻き起こし、やがて大きな事件を引き起こす。
本作『アメリカン・ビューティー』は、外から見ると「美しい」ようにうつるアメリカ社会の闇を皮肉を交えて描いた作品。豊かな家庭、官能の象徴として、アメリカ発祥の真紅のバラ「アメリカン・ビューティー」を掛けている。一見幸せそうな一般家庭をモデルに、謙虚さを忘れて欲にまみれた人間の末路を描くことで、如何に愚かで悲しい存在かを表している。
愛と欲望、悦びと憎悪、自由と支配など、人間が共通に持つ感情が深くまで描かれており、ゴールデン・グローブ賞では3部門(作品賞、監督賞、脚本賞)を獲得し、アカデミー賞では5部門(作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞・撮影賞)を受賞した話題作。過激な表現もあるため、気持ちに余裕がある時にご覧いただきたい作品です。 ※性や暴力など、一部過激な表現があります。
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解説・レビュー ※ネタバレ含む
欲望に支配された人間の果て
私たちは日々、豊かな社会の中で、複雑に廻りゆく社会で適合しようと必死になり生きている。
アメリカや日本のような比較的豊かな国では、幼い時から受験勉強に追われ他者と比べられ、子供も大人も等しく人の集合体の中で普通ではない異端児は隅に追いやられる。社会に出ても出世競争が待ち受け、大切な家族を養うために争い合い、私生活でも人間関係を維持するために、目の色変えてSNSで虚像の姿を発信する。
こんな忙しい社会の姿にため息をつきながらも「複雑な社会が生み出した偽りの美」にしがみつかもうと、目の前にあるものには盲目になり、人生の本質を見失う。
本作『アメリカン・ビューティー』は、一般的なアメリカの中流家庭をモデルに、欲にまみれることが如何に愚かで虚しい行為であるかを諭してくれる。アメリカを無頼に繰り広げられる家族劇ではあるものの、日本社会でも往々に起きる話。我々にとっても学べることが多くあり、ここでは、人間が共通に持つ“欲望”について、読み解いていく。
欲に目がくらみ、盲目になる人間
冒頭からバラに囲まれた立派な一軒家が、画面いっぱいに広がる。
真紅の美しいバラが示すように、本作の一つのテーマは「美」。各々がそれぞれの「美」を追い求めるが故、破滅いく様をテンポよく描く。

人は皆、心に抱えている悩みやコンプレックスを隠すために、成長の過程で多くの鎧を身にまとう。
そうすることで、嫌いな自分を奥底に隠し、「理想の自分」を作り上げるのだ。
美しい妻と娘に加え大きな家を持ち一見幸せそうに見えるバーナム家の内情は、口を開けば喧嘩ばかりの冷め切った家庭。
いつも華やかでビッチを気取る美少女アンジェラも、実はバージンで劣等感を人一倍強く抱く平凡な女の子。
規律を愛し厳粛な頑固おやじのフランク・フィッツに限っては、「ゲイを許さない」と言っておきながらも自分自身がゲイだった。
逆に、威厳のかけらもないダメ親父のレスターが、あることをきっかけに心身共に強気なオレ様になり果てる。
コインに裏と表があるように、外から見ると普通にみえるものが中を見ると全く違う姿を隠し持っている。
しかし、偽りの姿を貫き続けられるほど人間は強くない。
必死にまとい続けてきた分厚い鎧も、重みと息苦しさに堪え切れず、ふとしたことをきっかけに簡単に砕け散る
ジェーンと喧嘩したアンジェラは、見兼ねたリッキーに「きみは平凡な女だ」と指摘される。
きっと、アンジェラが一番気にしていたところを突かれたのだろう。ずっと強気だった彼女が簡単な一言で泣き崩れ、隠し続けてきた感情があふれ出す。
きっと彼女も孤独だったのだ。その美貌故に近づいてくる男は下心ばかりで、自己表現も下手なため自分を大きく見せてしまい本心を話せる本当の友達もできない。
元海兵隊少佐のフランクもまた、息子のリッキーがレスターに身体を売っていると勘違いをして癇癪を起こす。
愛国者のフランクは決してゲイを認めようとしない。例えそれが我が子であっても、その衝動から怒りと悲しみに我を忘れ、誤解を解こうとしてるリッキーに聞き耳を立てずに殴りつけ、家族の縁を切ると言いつける。あまりの理不尽に逆上したリッキーもまた、「あなたは惨めな老いぼれだ」と言い捨て出てってしまう。
しかし、直後の二人の行動からもわかるように、彼らのこの行動は決して本意ではない。
リッキーはジェーンに「彼は悪い人じゃない」と話すように、心から父親を憎んでいるわけではなかった。
フランクも然り、不器用でありながらもいつもリッキーが間違った道に進まないように気にかけていた。彼らは、本心は互いを思いやり優しい気持ちを持ちながらも、一時の感情や立場、ほんの小さな偶然が相まってどこかでボタンを掛け違ってしまったのだ。そして、そんな過ちや自分の間違いを認められないところも人間の弱さである。
アンジェラもフランクも、自身が思い描く“あるべき姿”を思い描いていただけだった。
嫌いな自分を克服するため、それに向かって懸命に努力をする。
しかし、そんな純粋な欲望が、いつの日か本当の自分を支配して何が本当かすらわからなくなる。
そんな中、一人だけ異質な人物がいる。
バーナム家の隣に越してきた青年、リッキーだ。精神科に入院していて、世間一般から見ると明らかな“異常者”だ。

しかし、彼が本当に異質ところは「自分を知っている」こと。「自分を偽らない」こと。
見境もなくジェーンをカメラで撮影し続けるその姿から、アンジェラとジェーンから“サイコ”と呼ばれ距離を置かれていたが、話してみるとわりとまともで、外目を気にしないだけの誠実な青年だった。カメラで撮影し続けている理由を聞かれ、「君に興味を持ったからさ」と辱めもなく堂々と答えるリッキーの姿に、「彼は自分をしっている」とジェーンが手のひらを反して関心するほどだった。
同様に、レスターもリッキーを認めている。
ある日、レスターはキャロリンの付き添い彼女のビジネスパーティに参加した。キャロリンから「不動産を売るにはイメージ作りが大事なの」と押し付けられ、ありもしない理想の夫婦像を演じることに愛想をつかしていたレスターのもとに、偶然会場でアルバイトをしていたリッキーが訪れる。
彼は共通の話題ですぐに意気投合するが、リッキーは特に悪気があるわけではなくレスターにマリファナを薦める。ストレスをため込んでいるレスターもまた「いくらだい?」とマリファナを吸い更に会話は盛り上がるが、そんな彼らのもとに同じ会場の支配人が現れ「バイトをサボっているなら、バイト代はやらないぞ!」と叱りつける。すると、なんとリッキーは一切動揺もせずに「バイト代なら結構です。消えてください。」と言い捨てるのだ。
上司にも怖けずに嘘偽りのない意志を示すリッキーに、レスターは「すごいな、君は僕のヒーローだ。」と感銘するのだった。
きっと、外見ばかりの「偽りの家族」を演じ続け、社会の「普通」に懸命に溶け込もうとしていたジェーンやレスターにとって、何物にも迎合せずに強い意志をもっているリッキーが魅力的に見えたのだろう。
一見、最も「社会不適合」なリッキーが、本作の中では最も「普通」の人間だったのだ。
しかし、異質が故に迫害されるのもまた事実。親には精神病に強制的にぶち込まれ、“大多数”の人間からは変人だと距離を置かれた過去を持つ。
ある時、リッキーに心を許したジェーンに彼は話す。
一番美しい作品を見せよう。
この日は今にも雪が降り出しそうで、空気がピリピリしてた。その感じ、分かる?
宙を舞う白い袋。遊びをねだる子供のように、僕にまとわりついた。15分もの間…。その日僕は知った。
すべてのものの背後には生命と慈愛の力があって、何も恐れることはないのだと。何も。
これはビデオ映像だけど、忘れないために撮影した。
「アメリカン・ビューティー」リッキー・フィッツ セリフ 原文ママ
この世で目にする美の数々。それは僕を圧倒し、心臓が止まりそうになる。
幼いころは、誰だって世の中に溢れる「美」に心をときめかしたはずだ。
始めてみる母親の姿に、愛情溢れる家族の笑顔。一度だって同じにならない外の風景。季節によって姿を変える壮大な自然…世の中にはいくらだって「美」があふれているのに、いつしかそれが見えなくなる。
「富」「名誉」「性」「自由」、社会に蔓延る様々な欲が、我々の目をくらませる。
豊かな生活を送っているにも関わらず、欲望に支配され人間の心は貧しくなるのだ。
愛や情熱は、力にも狂気にも変わりゆく
愛や情熱は、時に凄まじい力を発揮する。
立派な大人であるレスターが、娘の同級生アンジェラに恋する様は傍から見ると滑稽だ。
しかし、レスターにとっては本気そのものだった。「もっと筋肉質だったらやってもいい」という、アンジェラの冗談を交えたガールズトークを聞いたレスターは、年甲斐もなく筋トレとランニングに明け暮れる。

いい年こいてトレーニングばかりに明け暮れるレスターに家族は呆れているが、事実わずかな期間で別人のように肉体を追い込めるのだから大したもんだ。レスターは言っている。「不思議な気分だ。まるで20年間、昏睡状態になっていたのが、今やっと目が覚めた感じだ。」と。
彼が変わったのは肉体だけではない。家庭でも職場でも、言われっぱなしだったレスターは、キャロリンの抑圧的な態度にも反抗するようになった。それだけではない、リストラをにおわせてきていた職場の上司にも真っ向から啖呵を切り、上層部の汚職をネタに会社を脅し、多くの大金を手にして辞職した。
いままでぐーたらに過ごしていたどうしようもない中年男が、若い美少女への卑猥な恋をきっかけに美しい肉体になり、前向きな精神とストレスのない生活まで手にするのだ。あげくのはてには、リッキーからマリファナを買いドラッグにまで手を付ける。
周囲から見ると、努力のベクトルが間違っており転落人生そのものなのだが、そんな思いとはうらはらに本人は過去にもないほど生き生きしている。自己実現のために己を磨ききったことが、自信にも繋がったのだろう。
レスターが勝手に車を購入し、それを見たキャロリンといつものように喧嘩をはじめるふたりだったが、なにやら途中から様子が変わってくる。「ファイアーバード、ずっと前から欲しかった車だ。ついに買ったぞ!」と、また自分勝手な行動をするレスター。「私に相談もせずに?」と怒るキャロリンだったが、「いいことがあったのか? すごく綺麗だ。この家には、僕達だけだ。あぁキャロリン、そんな味気ない女にいつからなった?」といつもだったら衝突で終わっていたはずの会話が、レスターの誘いにより二人の距離は格段に縮まっていくのだ(結果的にはまた喧嘩をするが…)。それはきっと、自分の気持ちをストレートに表現できるだけの自信を入れたからだろう。
それが如何に愚かな行為でも、本人にとってそれが本気であれば愛や情熱がここまで人を変えるのだ。
どんな絶望の中にいたとしても、意識一つで人には生まれ変われる力があるということだ。
しかし、これが本当の奈落への入り口だった。
レスターがそれまでに犯してきた愚行や数々やその強気な態度が相まって、誰にも止められない負の螺旋が回り始める。
まず、キャロリンの浮気が発覚する。
不運にも、キャロリンはレスターが働いているハンバーガー屋にたまたま浮気相手と尋ねてしまった。

しかし、レスターの反応は意外にもささやかだった。一瞬怒る素振りを見せたものの、言い訳をするキャロリンを「僕は構わないよ」と一蹴する。きっと、レスターにとってもアンジェラという愛すべき相手がいたからであろう。もはや、キャロリンが何をしようと彼にとってはどうでもよかった。
しかし、いつもレスターを否定し上から押さえつけてきたキャロリンにとって、自分の過ちがレスターに知られたことで気が気でない。更に、この出来事をきっかけに浮気相手にも逃げられてしまう。なんとも思っていないレスターを裏腹に、キャロリンの不安は最大限まで達し、その感情はいつしかレスターへの憎悪に変わる。
次にフランクだ。

彼は隣人であるもののレスターと深いかかわりは持っていなかった。
それよりも、パーティーをきっかけに仲良くなった息子のリッキーとレスターの関係は続き、未だにレスターはマリファナを買い続けていた。たまたま、リッキーがレスターにマリファナの扱い方を教えていた現場をフランクが目撃してしまうのだが、のぞき見していた位置からの偶然に偶然が重なって、フランクはリッキーがレスターに身体を売っているものだと勘違いをする。
衝撃と怒りに我を忘れたフランクは家に戻ったリッキーを殴りつけ縁を切るのだが、悲しみに明け暮れていたフランクは何を思ったのか、何も知らずに筋トレをしているレスターの車庫を豪雨の中で傘もささずに訪れる。
いつもと違う弱々しい姿のフランクに驚いたレスターだったが、彼は優しくフランクを車庫へと迎え入れる。すると、フランクは突然レスターにキスをするのだった。
秩序や規律を愛し、曲がったことが嫌いだったフランクが実はゲイだったと気づく衝撃的のシーンだ。私たちと同様に、驚きを隠せないレスターだったが、「すまないな、何か勘違いをしている。」と紳士のごとくフランクを引き離すのだった。すると、魂を失ったかのように無表情で再び豪雨の中に消えていくフランクだったが、愛する息子だけでなく、最後の希望となっていたレスターとの恋も実らなかったフランクは、悲しさ故にレスターを射殺する。
なんという結末だろう。せめてもの話、キャロリンがレスターを殺すのならば話はわかる。
まさかフランクが、、、と、この映画を見たほとんどの人が驚いたことだろう。たいしてかかわりも深くなく、フランクに対して特別悪いことをしたわけでもないのに殺されるなんてさすがにそれは理不尽すぎる。
しかし、この広い世界の中で理不尽は往々にして起きる。
また、フランクの失恋により殺されたことも事実だが、その過程を作り出したのはレスター自身であることも事実だ。
そもそも、マリファナなんて始めなければフランクの誤解を生むこともなかった。もっと誠実に家族を大事にしていたら、マリファナに逃げることもなかった。
あるいは、フランクが殺さなくても、もしかしたら憎しみと怒りに崩壊したキャロリンがレスターに手を下していたかもしれない。
愛や情熱には、人を変える底なしのパワーを持っている反面、その思いも掛け違えると狂気へ変わる。
レスターは恋によって生き返り、恋によって殺されたのだ。
それも、どちらも非常に自己中心的である一方的な不純な恋にだ。
更にそれは、皮肉なことにもどうしようもなかったレスターが父親の顔を取り戻し、まともになった瞬間に不幸が起こる。
なんて虚しく、悲しい人生なのだろう。
レスターは死に際に告白する。

“死の一瞬、全人生が目の前を横切ると言われている。
しかし、その一瞬は一瞬ではないのだ。それは大洋のように果てしなく広がる時間。
ボーイ・スカウトのキャンプで草原にひっくり返り、流れ星を見ていた僕。うちの前の通りのかえで並木の黄色い落ち葉。しわくちゃの紙にそっくりのおばあちゃんの手。そして初めて見たいとこのトニーのピカピカのファイアーバード。
ジェーン、僕のジェーン。そしてキャロリン。こんなことになって腹が立ってるか?
美のありふれる世界で怒りは長続きしない。
美しいものがありすぎるとそれに圧倒され、僕のハートは風船のように破裂しかける。そうゆう時は体の緊張を解く。するとその気持ちは、雨のように胸の中を流れ、感謝の念だけが後に残る。僕の愚かなとるに足らぬ人生への感謝の念が。たわ言に聞こえるだろう?大丈夫。いつか理解できる。”
「アメリカン・ビューティー」レスター・バーナムセリフ 原文ママ
欲にまみれる人間に対する警告や皮肉にも取られるこの作品だが、私はこれを前向きに捉えたい。
個人的な解釈だが、本作はそんな人間の儚さや愚かさ、そして世の中が美しくも残酷でもあることを伝えたかったのだと思う。
私たちはまだ、意識一つでやりなおせる人生を歩んでいる。そして、世界はありふれた「美」で埋め尽くされている。
確かに、人間は愚かだ。器量さえあれば素晴らしい世界も、悲しくも虚しい世界になり替わる。
しかし同時に、自分の心、自分の見方ひとつで世界は素晴らしいものになることを忘れてはいけない。
受賞歴
アカデミー賞(2000)
作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞・撮影賞
ゴールデングローブ賞(2000年)
映画部門作品賞・映画部門脚本賞・映画部門監督賞
その他受賞歴
英国アカデミー賞・全米映画俳優組合賞・全米監督協会賞・全米撮影監督協会映画賞・ロンドン映画批評家協会賞・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞・放送映画批評家協会賞・トロント映画批評家協会賞・全米製作者組合賞・ボディル賞 等
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サム・メンデス監督の別作品
映画監督:サム・メンデス
・2020年:1917 命をかけた伝令(監督/製作/脚本)
・2015年:007 スペクター(監督)
・2014年:ナショナル・シアター・ライヴ2014「リア王」(監督)
・2012年:007 スカイフォール(監督)
・2011年:お家(うち)を探そう(監督)
・2009年:レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで(監督/製作)
・2006年:シャーベット(監督)
・2002年:ロード・トゥ・パーディション(監督/製作)
・1999年:アメリカン・ビューティー(監督)
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