映画『ヒア アフター』あらすじ・解説・レビュー

こんな方へ

・つらいことがあった人
・悩みがあって前向きになれない人
・後悔やトラウマがある人

〔 こんな方は控えてください… 〕
・津波や災害のことを思い出したくない人 ※激しい津波の描写があります。
・ホラーやスリリングな映画を求めている人 ※本作は「死後の世界」をテーマとしたヒューマンドラマです。

本サイトでは気分や目的別にカテゴリー分けをして作品をご紹介してします。他の作品も是非ご覧下さい

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作品情報・あらすじ

  • 作品名(原題):ヒア アフター(HEREAFTER)
  • 制作年度:2010年
  • 上映時間:129分
  • 監督(制作国):クリント・イーストウッド(アメリカ)

「死」を間近にもつ3人の苦悩と解放の物語

本作は、霊能力者のジョージ(主人公)、ジャーナリストのマリー、双子の兄弟のマーカスの物語の三重構造でストーリーが進む。実際とは順番は前後するが、ここでは複雑になることを避けるため各々を別に記載する。

霊能力者 ジョージの物語

サンフランシスコに住むジョージは、他者と手を触れることにより死者と交信ができる霊能力者。子供の頃に授かった特殊な力を仕事として活用していたが、死の世界を覗き見ることを日常とした生活に疲れたジョージは、その力を封印し今は普通の工場員として勤めているのだった。

ある日、そんな彼の元に兄のビリーが友人を連れて訪れる。一度だけで良いから、亡くなった妻の話を聞いてほしいと言うのだった。

初めは断っていたジョージも、兄と友人の強い推しから”一度だけ”と泣く泣く死者との交信を引き受けるのだった。この力は絶対に他言しないことを条件に依頼を一度だけ引き受けたものの、それを機にジョージの力は一部で広まり、大切な人を失った人たちがジョージに救いの手を求めるのだった…

ジャーナリスト マリーの物語

フランスで成功をおさめていたジャーナリストのマリーは、同局の彼氏と休暇をとり東南アジアへとリゾートに来ていた。

お土産を探しに1人で外に出た時に、突如迫り来る大津波に巻き込まれた。津波にのまれ、生き残ろうと必死に抵抗をするも流れ来る資材に頭を打たれ、マリーは水中で意識を失う。
すると、不思議な感覚に襲われるマリー。彼女はこのとき臨死体験をしていたのだ。死に際にいたマリーだが、その場にいた男たちに救命措置をされ、マリーは一命を取りとめる。

その後、マリーはフランスに戻りすぐに仕事に復帰しようとするも、一命をとりとめた時に経験をした臨死体験が頭をよぎり思うように集中ができないのだった。

津波による心身のダメージを心配されたマリーはディレクターから休暇をとるように命じられ、昔からしたいと思っていた執筆活動に身をとうじるのだが…

双子の兄弟 マーカスの物語

ロンドンに住む双子の兄弟のマーカス(弟)とジェイソン(兄)。彼らは、アルコール中毒の母親と3人で暮らしていた。

日々飲んだくれの姿で帰ってくる母親もマーカスとジェイソンにとってはたった一人の存在。そんな母親を喜ばせようと、彼らは写真館でとった自分たちの写真をプレゼントするなど、幸せな日々を送っていた。

ある日、ジェイソンは母の薬を買うため、薬局へ向かう。宿題が終わっていないマーカスは家に残り兄の帰りを待っていたが、ジェイソンは帰りに道に不慮の交通事故にあい亡くなってしまう。

ジェイソンの事故をきっかけに母も更生施設に入ることとなり、マーカスは里親に引き取られることとなるが、愛する兄と母を失い一人取り残された彼は心を閉ざすようになる。どうしても兄のことを忘れられないマーカスは、ジェイソンとの再開を望んで片っ端から霊能力者を調べ探し求めるのだが…

ジョージ、マリー、マーカスの出会い

亡き人と交信できると言う特殊な力に人生を台無しにされてきたジョージ。
臨死体験をきっかけに、何かにとりつかれたように死後の世界に惹かれるマリー。
不慮の事故により愛する双子の兄を失い、失意の中にいるマーカス。

”普通の人たち”とは決して相入れることのなかった、死後の世界に惹きつけられた3名の主人公。誰からの理解も得られず苦しんでいた彼らだったが、あることをきっかけに死後の世界に関わりを持った3名は運命的な出会いを果たす…

本作『ヒア アフター』は「死後の世界」いう非常に難しいテーマを扱った作品。霊的なことをテーマはどうしても現実離れしてしまう作品が多いが、本作は人間の愛や喪失感、苦悩を克服する姿に焦点が当てられ描かれている。
巨匠クリント・イーストウッド監督を務め、アカデミー賞にもノミネートされた名作。激しい津波の描写があるため日本での公開は中止となったが、監督は一部の収益を東日本大震災への義援金として寄付したとのこと。
生きることの意味、そして個々が別の存在としてあるべきことの意味を考えさせられる深みのある作品です。

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解説・レビュー ※ネタバレ含む

「死」とテーマに本当の「生」を考える

死に触れて初めて生を考える

本作、「ヒア アフター」は死後の世界をテーマにした作品です。
しかし、これは死後の世界をテーマに、今を生きる者たちがどう生きるかを説いた物語。

大津波に襲われ臨死体験をしたことにより、人が変わったかのように死後の世界を調べ始めるマリー。
彼女はおそらく、世界の中でもいわゆる成功者に入る人間である。能力も高く、富も人望も持っている。それが、何かに取り憑かれたかのように方向転換をし、社会的な成功を捨ててまで死について調べることに人生を捧げ始める。

きっと彼女は臨死体験をしたことで、確かな世界がそこにあることを感じたのだろう。
そしてそれは、人類が共通して知るべき世界なのだと。

兎にも角にも、それをより詳しく知るために、そして多くの人たちに伝えるために必死にもがく。

双子の兄を事故により亡くしたマーカスもそう。
失うことにより初めて、愛するものの尊さに気づいたのである。

頼りにしてきた兄のことを忘れられず、なりふり構わず霊能力者を探し始める。

幾人ものエセ霊能力者にあたってはインチキをされるその姿は、見ている側が辛くなるほど懸命だ。それでもマーカスは、まるでそうすることによって自分を保っているかのように霊能力者を探し歩く。

ジョージに出会った時も同じだ。一度断られた後もずっと追い続け、凍える寒さの中でジョージを待ち続ける様は見ていられない。

きっとその先に何があるのかは考えることはできていないだろう。
ただ、もう一度兄と会えない限り人生が始まらないかのように、周囲のことなど気にも留めずにただひたすらに霊能者を探すのだ。

マリーとマーカスに共通することは、「死」を間近に触れたことで「生き方」を変えたこと。

死は、万人に訪れるもの。
それにも関わらず、多くの人間が死後について真剣に考えたことはない。

実のところ、私もマーカスのような経験がある。
私の場合は、愛する存在を失いかけたというところまでだが…

当たり前のように側にいて、当たり前のように一生を共に過ごすと思っていた相手が、あることをきっかけに目の前で命を落としかけた。
今でもその時の感情はよく覚えている。

不思議なことに、その瞬間に頭によぎることは「後悔」だった。
なぜもっと誠実でいなかったのか。
なぜもっと時間を大切にできなかったのか。

自分の過去を振り返り、取り戻せない時間を死ぬほど後悔した

幸い大事には至らなかったため、それから少しばかり気持ちが変わるようになった。
二度とあんな経験はしたくないが、あの経験がない限り自分は変わらなかっただろうとも思う。

人間は愚かな生き物だ。

手を伸ばすところにあるものは、それに価値を感じない。
しかし、届かない場所に行ってしまった時に初めて尊さを感じるのだ。

死とは何か。

私たちは生きており、いずれは必ず死ぬ。

死は遠い存在ではない。自分の死、愛する者の死。
死は私たちに共通して怒ることであり、意外と近い存在になる。

臨死体験の話は聞くことができても、本当に亡くなった人間から死後の世界の話を聞くことはできない。つまり、死後について明確な答えは存在しないのだ。

しかし、私たちは自分の人生については考えることができる

今しかないこの人生をかみしめることができる。

マリーやマーカスはきっとその本質に気づいたのだろう。この世を去ることは、二度と生に戻れないということに。つまり、生きている今を如何にして過ごすかということに。

今でも多くの人が「死」を近くに考えている人はいない。本作ヒア アフター「死」という答えないテーマを持って、私たちが今を生きていく意味を改めて考えさえられる作品です。

自分に誠実であり続けること

また、本作には不器用なほどに嘘がつけない人間の姿が描かれている。
嘘というのは、他人に対してと自分に対して、2つの意味がある

客観的に見ると、なぜかと思うぐらい嘘のつくことができないジョージ。
誰にも確認のしようがない死者との交信であれば、少しばかりの嘘をついてもバレないであろう。

料理教室でジョージと仲良くなった女性のメラニー。徐々に良い雰囲気になり互いに惹かれ合う2人だったが、ジョージの霊能力を知った彼女は断るジョージを押し切り自分のことを霊視するように頼み込んだ。

メラニーの亡き母のことを話し、「食事にしよう」と切り替えようとしたジョージだったが、「ねぇ 他には? 見えたでしょ お願い 見えたはずよ」と霊視の続きを執拗に迫るメラニー。ジョージはためらいながらも、幼き頃にメラニーに”ひどいこと”をしていたとされる父の言葉を伝える。すると、平静を保てなくなったメラニーがその場を立ち去った。

正直、なぜ話してしまったのかと思う。
見たことを全て話すことが誰にとっても幸せな結果にならないことはおそらくジョージも感じていたはずだ。

しかし、彼は話してしまった。
そして、メラニーはジョージの前に二度と姿を現さないのだった。決して悪いことや嘘をついているわけでもなく、相手の要望に応えただけなのにこんなにも辛いをする人生があるのだろうか…

マリーもそうだ。
彼女は、会社の意向を完全に無視し、自分の描きたい大殺界のことを著書にしたことで信用をなくし、キャスターの座に戻ることはなくなってしまった。恋人も失った。

おそらく、マリー程の能力の持ち主であれば、先に会社が望む仕事をこなした後に、自分のことに没頭する時間も作れたであろう。

ジョージもマリーも、利益を省みて、たった少し嘘をつけば良いのだ。ほんの少しだけ自分を抑え、相手に合わせるだけで良いのだ。それが”こと”をうまく進める方法になる。

しかし、彼らは嘘をつけないのではない
ついてはいけないことを知っているのだ。

作中、彼らと対照的に描かれているエセ霊能力者が何度か登場する。
兄を亡くしたマーカスは”霊能力者”と呼ばれる者たちの元を多く訪ね歩いたが、そこには失望をする現実が待ち受けている。ホールを貸し切り公開霊視を始める女性霊能力者、イタコの口寄せをする者、音響機をセッティングして波長を図り始める者、無数の鏡を使って何かを始める老婆など…多くの”嘘つき霊媒師”が登場する。

彼らは子供を相手にしても、容赦無く嘘をつき丸め込もうとする。

一体、彼女たちは何を求めているのだろうか。
例えその場は権威や富を手にしたとしても、彼らは死ぬ時に何を思うのだろうか。

インタビューの中、クリント・イーストウッド監督は皮肉たっぷりに霊能力者のことを話す。

「脚本で興味を引かれた点の一つがインチキ霊能力者の描写だった。死後の話などをもっともらしく語り人々をだますことで生計を立てる人たちだ。彼らを信じるのは勝手だが、ニセモノには間違えない。この映画には死者たちと話ができる本物の霊能力者が登場する。その一方でインチキ霊能力者もいる。ジョージという本物の霊能力者とインチキ霊能力者たちを対照的に描いた。」

クリント・イーストウッド監督インタビュー 原文ママ

しかし、それで満足をしている人たちもいる。
厳密にいうと、満足をしているかはわからないが、それを生業として生きている人たちがいることは事実だ。

要は、死ぬ時に何を思うかだ。

少なくとも、真実を大切にしているジョージやマリーは”それ”ができない人間なのだろう。

その場の嘘をつくことは簡単だ。
しかし、相手がそれを信じようと自分のことだけは絶対に騙せない

小さな嘘も、嘘はやがて自分自身を支配する。
他人を偽ることはできても、自分を偽ることはできないのだ。

尚、本作では、最後にジョージがマーカスに話したことは嘘かどうかという議論が巻き起こっている。

これも、どんなに推測しようと実のところは当の本人にしかわからない。

クリント・イーストウッド監督が作るものは、明確な答えを提示せずに見る者の創造に委ねる作品が多い。

もしかしたら、今考えているその答えがあなた自身を体現しているのかもしれない。
これが優しい嘘だったと言うのであれば、あなたもこの場で嘘をつく側の人間でしょう。
これが嘘でないと思うのであれば、どんな酷な状況であろうと嘘をつけない人間なのでしょう。(ちなみに、私はこれは”嘘”だったと思っています)

どちらが良い悪いかではない。

長い人生を生きていると、どうしても嘘をつくことは誰しもにあるでしょう。
しかし、大事なことは、相手にとっても自分にとっても誠実であったかどうかだ。

自分の人生は誰に支配されるものない。自身の人生の価値は自分で決めるもの。

それだけに、自分に本当に誠実であり続けるかどうかは、豊かな人生を送るためにも必要なことではないでしょうか。

クリント・イーストウッド監督 インタビュー(15分)

本作は撮影を終えたクリント・イーストウッド監督の特典映像が用意されています。

如何でしたか。

”当たり前”のように流れているこの時間の中で、自身の人生に本気で向き合い考える機会はそうそうないでしょう。

本作「ヒア アフター」は決して他人事の物語ではありません。
「死」は誰にでも訪れ、「人生」も誰もが共通して持っているものです。

人生に迷っている人もそうでない人も、限りある人生という時間を考えるきっかけになる作品です。自分のことも人生のこともきっと大切に思えるでしょう。是非、ご覧ください。

受賞歴

その他受賞歴
David di Donatello for Best Foreign Film 等

クリント・イーストウッド監督の別作品

映画監督:クリント・イーストウッド
・2019年:運び屋(監督/製作/出演)
・2018年:15時17分、パリ行き(監督/製作)
・2016年:ハドソン川の奇跡(監督/製作)
・2015年:アメリカン・スナイパー(監督/製作)
・2014年:ジャージー・ボーイズ(監督/製作)
・2012年:人生の特等席(製作/出演)
・2012年:J・エドガー(監督/製作)
2011年:ヒア アフター(監督/製作/音楽)
・2010年:インビクタス 負けざる者たち(監督/製作)
・2009年:グラン・トリノ(監督/製作/出演)
・2009年:チェンジリング(監督/製作/音楽)
・2006年:硫黄島からの手紙(監督/製作)
・2006年:父親達の星条旗(監督/製作/音楽)
・2005年:ミリオンダラー・ベイビー(監監督/製作/音楽/出演)
・2004年:ミスティック・リバー(監督/製作/音楽)
・2002年:ブラッド・ワーク(監督/製作/出演)
・2000年:スペース・カウボーイ(監督/音楽/出演)
・1999年:トゥルー・クライム(監督/製作/出演)
・1998年:真夜中のサバナ(監督/製作)
・1997年:目撃(監督/製作/出演)
・1995年:マディソン郡の橋(監督/製作/出演)
・1993年:パーフェクト ワールド(監督/出演)
・1992年:許されざる者(監督/製作/出演)
・1991年:ルーキー(監督/出演)
・1990年:ホワイトハンターブラックハート(監督/製作/出演)
・1998年:真夜中のサバナ(監督/製作)
・1997年:目撃(監督/製作/出演)
・1995年:マディソン郡の橋(監督/製作/出演)
・1993年:パーフェクト ワールド(監督/出演)
・1992年:許されざる者(監督/製作/出演)
・1991年:ルーキー(監督/出演)  等…

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