映画『ゴッドファーザー PARTⅢ』あらすじ・解説・レビュー

こんな方へ

・人生に迷っている人
・自身を客観的に見つめ直したい人
・大きな選択や決断を迫られている人

〔 こんな方は控えてください… 〕
・淡々とした映画が苦手な人 ※派手さあまりないです。
・古い映画が嫌いな人
・暴力的な描写が苦手な人

本サイトでは気分や目的別にカテゴリー分けをして作品をご紹介してします。他の作品も是非ご覧下さい

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作品情報・あらすじ

  • 作品名(原題):ゴッドファーザー PARTⅢ(THE GODFATHER: PART III)
  • 制作年度:1990年
  • 上映時間:162分
  • 監督(制作国):フランシス・フォード・コッポラ(アメリカ)

ゴッドファーザー最終章:富と権力を極めた男の孤独な内面を描く

「ゴッドファーザー PARTⅢ」は「ゴッドファーザー 」「ゴッドファーザー PARTⅡ」の続編。
前作なしには語れない作品なので、見ていない方はまずはこちらからどうぞ。
👉 映画『ゴッドファーザー』あらすじ・解説・レビュー
👉 映画『ゴッドファーザー PARTⅡ』あらすじ・解説・レビュー

時は1979年、アメリカのニューヨーク州。
ヴィドーを引き継ぎドンとなったマイケル・コルレオーネは歳を取り初老にさしかかっていた。一方、離婚した妻ケイとの間に授かった息子のアンソニーと娘のメアリー立派な大人に成長していた。

父の名をとった「ビトー・コルネオーネ財団」の名のもと、数々の慈善事業にも手をかけているマイケルは多額の寄付をしたバチカンから表彰を受ける。

仕事では益々の権力を築く一方で、家族との親交は相変わらずうまくいかない。マイケルからコルレオーネファミリーの跡継ぎを期待されていたアンソニーからは説得を断られ、夢だったオペラ歌手を目指すと言うのだ。
唯一、娘のメアリーだけは心からマイケルのことを慕っていたが、別れた元妻ケイはいまだに冷酷な一面を持つマイケルを恐れ、避け続けるのだった。

一方で、敵のマフィアに銃殺された亡き兄ソニーの息子、ビンセントが悩みの種を持ってくる。

ビンセントは父親譲りの血の気の多い性格で、コルレオーネファミリーのニューヨークエリアを任せられていたジョーイ・ザザと対立。
マイケルは互いに仲直りをするように求めたのだが、2人が説得に応じ和解の抱擁をした直後、ビンセントがザザの耳を噛みつき好戦的な姿勢を見せるのだった。

救いようのない性格の甥のビンセントだが、マイケルに対する絶対的忠誠とファミリーに対する愛は誰よりも強く持つ一途な彼を放っておくことはできず、数週間自分の元につけることを命じる。

また一方で、バチカン市国の司教ギルティ氏が、横領したバチガン銀行の損失6億ドルの支援をマイケルに頼み込んでくる。マイケルはこれを表社会でも力を得るチャンスと捉え、国際的大企業インモビリアーレの株式と経営権を獲得を要求する。

これを機に、マイケル、ビンセント、ジョーイザザ、そしてマイケルの愛する者たちを巻き込んだ悲しみの連鎖が回り始める….

本作『ゴッドファーザー PARTⅢ』は、映画史上最高の作品とも称される「ゴッドファーザー」シリーズの完結編。1772年に初作が出たのに対し、本作は1991年の作品。20年越しの3部作となった。3作全ての監督をフランシス・フォード・コッポラが務め、大切なものを守るために全てを犠牲にしながらも自身が犯してきた罪に苦しみ続ける男の苦悩や葛藤、末路を繊細に描く。

有名な賞こそ受賞していないものの、PARTⅠ・PARTⅡに負けず劣らずの強いインパクトと余韻を残し、これぞ本当の「完結編」と思わせてくれる最終章にふさわしい作品。「ゴッドファーザー」シリーズに魅了された人には絶対に見逃せない作品である。

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解説・レビュー ※ネタバレ含む

誰も一人では幸せになれない

人は限られた時間になって初めて、本当の意味で人生を考える。

本作「ゴッドファーザー PARTⅢ」はその典型です。
今までいくつもの罪を犯してきたマイケルが、過去を悔い改め真っ当な道に戻ろうとするも自らが巻いてきた種や柵がそれを許さない悲痛な物語。

一度入ったら死ぬまで抜けれない裏社会との繋がりや、どんなに悔い改めても拭いきれない罪の心が繊細に描かれている。

3作を通して、マイケルの”行動”は一貫している
一つは、ファミリーの利益のみを最優先としてビジネスを進めるところ。そしてもう一つは家族を思い続ける気持ち。ファミリーのため、家族のためには自分を律し、どんなに汚いことであろうが殺人であろうが平然とやってのける。

それ以外には特別な欲がなく、どれだけの富を得ようとも、派手な遊びするわけでも自身の功績を誇示することもしない。
敬愛されていた父の姿を目指し、その精神を次世代へと継承するために動き続けるのです。

一方で、歳を追うごとにマイケルの”意識”は変化し続ける

今までは、機械のように感情を抑え多くのことを成し遂げてきた。
自分の中では罪の気持ちに苦しみながらも、平静を装い自分以外の人間に感情を晒すことなど一度もなかった。

それが歳を追うごとに、「(大切な人に)本当の自分を知って欲しい」「おかしてきた罪を贖いたい」という気持ちが強くなるのです

作中、ランベルト枢機卿に促され、迷いながらもマイケルが懺悔をするシーンがあります。

枢機卿「心が苦しむと、肉体も苦痛で叫ぶのだよ」
マイケル「その通りです」
枢機卿「どうだね?懺悔をしては?」
マイケル「枢機卿 懺悔など もう何年も…どこからはじめたら…30年もごぶさたで..お忙しい時間を取る事に…」
枢機卿「魂を救う時間はあるよ」
マイケル「私の罪は神の救いを超えてます」
枢機卿「ここの僧侶も私の所へ懺悔に来る 気持ちを抑えられなくてね その瞬間が大事だ
マイケル「悔い改めもせず懺悔してどんな意味が?」
枢機卿「君は計算に強いとか 懺悔してどんな損が?」
マイケル「(間をおいた後に)私は 妻を裏切りました 自分にも偽りを… 人を殺し 人を殺させました」
枢機卿「続けるがいい 息子よ」
マイケル「やはりムダです」
枢機卿「続けなさい」
マイケル「兄を…人に命じて私に背いた兄を殺させました 私の母の息子を…私の父の息子を…」
枢機卿「恐ろしい罪だ だから苦しむのだ 神は救って下さるが 君はそれを信じないし改めないだろう 父と子と聖霊の御名によってあなたの罪を許す」

ゴッドファーザー PARTⅢ 原文まま

マイケルが、本当の自分を取り戻した瞬間でした。

長いあいだ感情を抑えてきたマイケルが、人前で涙を流し懺悔するのだ。
迷いながらも、自分のしてきたことを口にすることで、肩の荷を少しだけ下ろせた気持ちになるのだった。

これを機にマイケルは変わり始める。
そしてシチリアに戻った時、別れた妻のケイにもマイケルは心の奥底にしまい続けてきた想いを話します。

マイケル「この国が好きだ」
ケイ「なぜ?」
マイケル「大昔からこの国の人間は辛酸をなめてきた 不正に喘いだ なのに不幸でなく幸せが訪れると信じている
ケイ「私達のようね」
マイケル「なぜ?」
ケイ「そうでしょ?あれだけの事があったのにまだ…」
マイケル「”忌み恐れてる”んだろ? (冗談まじりに)”死ね”と命令を」
ケイ「それで恐れが消える?」
マイケル「シチリアのオペラさ これから先は?」
ケイ「穏やかに 傷つけ合いをやめるの」
マイケル「許してくれ
ケイ「何を」
マイケル「すべてを」
ケイ「神が許すように?」
マイケル「聞いてほしいんだ あの時はわかってもらえなかった おやじの跡は絶対に継がないと誓ったが 命を狙われれば子として親を守る 妻や子供たちに危険が及んで黙って見てられるか? 君はこの世で僕が愛したかけがえのない女だった だが結局はその君も失ってしまった 何のための闘いだったのか… 俺は別の未来を夢に見ていた もうよそう」
ケイ「どうしてそんな話を?」
マイケル「僕は君の考えているような男では…
ケイ「私にどうしろと?」
マイケル「君を愛してる 恐れ 憎まないでくれ 毎晩シチリアに来てから夢を見る 妻と子供たちの夢を 彼らを失ったよ」

ゴッドファーザー PARTⅢ 原文まま

シリーズの3作品すべての想いを詰めたような言葉だ。
歳を老い死に際となりようやく、自らの人生を本当の意味で考えるようになり、何十年も自分一人で隠し続けた感情や弱さ、愛する人への気持ちを正直に打ち明けるのです。

結局、人は一人で幸せを掴むことも、完璧になることもできない
幸せにすべき「相手」がいて、それは初めて達成されるのです。

それにもかかわらず、人は果てしなく傲慢で、わがままななのだ

他者からの恩恵は忘れ、自己の功績は主張し続ける。
傷つくことを恐れ、他者を傷つける。
簡単に他者のことは突き放すのに、自分は繋がりをどこまでも求める。

本作「ゴッドファーザー PARTⅢ」は、家族とビジネス、権力と暴力、愛と葛藤の中で踊らされるマイケルの苦悩、そして悲しさを感じさせられる完結作となっています。

深い悲しみと余韻を残す衝撃の終焉

そして、20年の時を経て完結となったこの壮大な物語は悲しいフィナーレを迎えます。

マイケルが犯した罪の代償はあまりにも大きすぎました。
心から愛し、人生の支えとなってきた娘メアリーの死という、マイケルにとっては自分が死ぬよりかも遥かに辛い試練をあたえるのだ。

メアリーの死後のマイケルの叫びは、今でも忘れません。

マイケルは「神さま!なんて事だ!」と言い、狂ったように泣き叫びます。
まるで、自身の心が殺されたかのように…
何十年も貯めてきた心の叫びを全て出し切るように…
そして、歩んできた人生の全てを悔いるように。

実兄のフレドを殺した時でさえも家族に涙のひとつ見せなかった男が、見境もなくただただ感情を露わ(あらわ)にするのです。

悲しみに明け暮れるヴィンセントやケイ、コニーを驚かせるほどに、ただただ泣き叫ぶのだ。

そして、幸せだった過去を回想しながら、たった一人で最期を迎えるマイケル
長く壮大な物語が終わった喪失感や満足感、まだ見たいという余韻、そして最悪のフィナーレを迎えた絶望感や後悔など、多くの感情が一挙に押し寄せてきます。

2作目までのマイケルは、報いを受けて当然の行いを繰り返していました。

しかし、本作(PART3)では、自身の要望に刃向かう息子の夢を本気で支援したり、本心をもって懺悔し、妻に気持ちを打ち明けたりと、劇的な変化を見せました。

真剣に悩み、苦しみ、償おうとしているマイケルの姿に、多くの人が共感したでしょう。
きっとマイケルは救われるのでは思ったし、救われてほしいと心から願いました。

しかし、因果応報とも云えるこの結末。
大きな責務と重圧を背負った男の運命は、あまりにも悲しい末路を迎えました。

どんなに富や権力を持とうが、死ぬ時は皆同じたった一人の普通の人間なのです。

ちなみに、本作ではバチカン利権をめぐるマフィアと教会関係者の繋がりが描かれていますが、これらは1978年に教皇に選出された「ヨハネ・パウロ1世」が在位33日に不可解な状況下で亡くなった事件をモデルにしたもの。当時のバチカン銀行総裁、マルチンクス大司教とマフィアが繋がりを持って汚職をしていたことがわかり、大きなスキャンダルとなりました。また、作中登場する「インもビアーレ社」や「ジョーイザザ(実際はジョー・コロンボとう別名だが)」も実在する企業や人物をモデルとしている。

実社会でも蔓延している悪や暴力、これらの闇が生み出す虚しさや悲痛な訴えをコッポラ監督は多くの人々に共感される形で完遂しました。

一人の人間、一つの家族にこんなにも真摯に向き合い、共感できる作品はそうそうないでしょう。
悔しさ、悲しさ、もっと見ていたいという余韻があふれ出します。

しかし、人生も一緒です。
いくら悔もうが、いくらやり直したいと思っても、リセットすることも巻き戻すこともできない

一作目から50年近くが経った今でも尚、ゴッドファーザーシリーズが「映画史上最高の作品」と称される理由がよくわかります。

どんなに時間が経とうと、どんなに技術が発達しようと、人の心は変わりません。
そして本作「ゴッドファーザー PART3」はそれを締め括るのに相応しい深みのあるものに仕上がっています。
どんな人にも人生の中で一度は目にしてほしい、悲しくも深い至高の名作です。

受賞歴

受賞歴
satellite award for best classic dvd・fotogramas de plata for best foreign film 等

賞が多すぎてどれがすごいのかわからない….」という方はこちら!
 👉 映画賞ってどれがすごいの?

フランシス・フォード・コッポラ監督の別作品

映画監督:フランシス・フォード・コッポラ ※「監督」としての作品を抜粋
・2016年:地獄の黙示録(監督/製作/脚本/音楽)
・2012年:ヴァージニア(監督/製作/脚本)
・2012年:テトロ 過去を殺した男(監督/製作/脚本)
・2008年:コッポラの胡蝶の夢(監督/製作/脚本)
・2002年:地獄の黙示録 特別完全版(監督/製作/脚本/音楽)
・1998年:レインメーカー(監督/脚本/製作総指揮)
・1997年:ジャック(監督/製作)
・1992年:ドラキュラ(監督/製作)
1991年:ゴッドファーザー PARTⅢ(監督/製作/脚本)
・1989年:ニューヨーク・ストーリー(監督/脚本)
・1988年:タッカー(監督)
・1987年:友よ、風に抱かれて(監督/製作)
・1987年:べギー・スーの結婚(監督)
・1985年:コットン・クラブ(監督/脚色/原案)
・1985年:ランブルフィッシュ(監督/脚本/製作総指揮)
・1983年:アウトサイダー(監督)
・1982年:ワン・フロム・ザ・ハート(監督/脚本)
1975年:ゴッドファーザー PARTⅡ(監督/製作/脚本)
・1974年:カンバセーション 盗聴(監督/脚本)
1972年:ゴッドファーザー(監督/脚本)
・1970年:雨のなかの女(監督/脚本)
・1969年:フィニアンの虹(監督)
・1963年:グラマー西部を荒らす(監督/脚本/製作)

「そもそも映画作りに誰が一番重要なの?」という方はこちら! 👉 映画作りのキーマンは誰?

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