映画『グラン・トリノ』あらすじ・解説・レビュー

こんな方へ

・カッとなって理性を失っている時
・辛いことや嫌なことがあった人

〔 こんな方は控えてください… 〕
・淡々とした映画が好きではない人
・小難しい作品が嫌いな人

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作品情報・あらすじ

  • 作品名(原題):グラン・トリノ (GRAN TORINO)
  • 制作年度:2008年
  • 上映時間:117分
  • 監督(制作国):クリント・イーストウッド(アメリカ)
  • 主な受賞歴:ー

町一番の頑固ジジィと気弱な少年の垣根を超えた友情物語

主人公は妻を亡くし、一人暮らしの老人ウォルト。

ウォルトは、白人や黒人を始め、移民が多く住むデトロイトに住んでいた。口が悪く、ちょっとしたことですぐに銃を取り出す「超」のつく頑固老人。彼には、周囲の人間はおろか息子や孫までも距離を置いていた。

そんな彼の隣にはアジア系の民族、モン族の家族が住んでおり、自分とは違う人種で何を考えていてる彼らをウォルトは毛嫌いでしていた。

モン族の家族の中には、タオという気弱な少年がいた。タオは、従兄弟が所属しているモン族のギャングに度々勧誘されており、”入団テスト” としてウォルトが宝物のように大事にしている愛車「グラン・トリノ」を盗んでこいとけしかけられる。

夜中、ウォルトのガレージに侵入するタオだったが、ウォルトに気づかれあえなく失敗。顔は見られなかったものの、ウォルトは盗みに入ったことを後悔しているのだった。

一方、モン族のギャングは執拗にウォルトを勧誘し、ある日ウォルトの家族と激しいもみ合いを起こす。隣の家の前でもみ合いを起こし、自身の庭までも荒らされたウォルトは銃を取り出しギャング達を追い払う。

思えば、これが全ての始まりだった。

義理堅いモン族の家族は翌日から、感謝の意を示すために大量の花束やご馳走をウォルトに贈り届ける。迷惑だからと断るウォルトだったが、「グラン・トリノ」を盗もうとしたのは自分だったとタオが自白し、タオはウォルトの仕事を手伝う羽目になるのだった。

これをきっかけに、頑固者のウォルトがタオに気を許し、やがてはタオの家族とも距離が近づいていくのだが….

本作「グラン・トリノ」は巨匠クリント・イーストウッドの集大成でもある一作。深いテーマの中にも彼の粋な演出が忍び込んでおり、テンポよく見れる素晴らしい作品です。

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解説・レビュー ※ネタバレ含む

「生と死」へのあくなき追及

本作には2つのテーマがあります。

一つ目はウォルトの「贖罪(しょくざい)」について。

「贖罪(しょくざい)」とは、実際に行う行動によって犯した罪を償うこと。キリスト教では、キリストが犠牲の死を遂げることで世の人の罪を償い救いをもたらしたという教えのことです。

では、ウォルトの罪とは?

ある時、キリスト学校を卒業したばかりの若造神父とウォルト間でこんなやりとりがあります。

神父「戦争は悲惨です。生き残るため、また人を助けるために敵を殺す。確かに私の知らない世界です。しかし赦しは知ってます。犯した罪を神に打ち明け悔い改めれば人は心の重荷を下ろせる。あなたよりも強く、命令で残虐行為に走った男でも安らぎを得るのです。」

ウォルト「1つだけ正しい。俺より強い男でも魂の救いを得る。だが間違いもある。命令もされず、自らやった(敵を殺した)ということが恐ろしいのだ。」

ウォルトが本音を話した瞬間でした。
ウォルトは、数十年前に朝鮮戦争に従事した時に何名もの幼い命を奪っており、その罪の意識をずっと拭いきれないでいるのです。

もう一点のテーマは「生と死」について。

こちらも、カトリックの教えとして「生死」を語る神父に対し、ウォルトは憤りを隠せません。本作の中でも、この二人の間で生と死について何度も言及しています。

また、ウォルトは病も患っており、自身の死が近いことも自覚しています。実際に作内でも吐血するシーンが何度もあり、ウォルトは自身に残されている時間が少なくなっていることも受け入れています。

限られた時間の中、ウォルトが思い起こすこと。
それは人生における「喜び」ではなく「後悔」だった。

そもそものウォルトの性格が原因でもあるのだが、彼の周りには碌な人間がいない。唯一の身内であった息子家族も、ウォルトの遺産のことしか考えてないような人間だ。奥さんだけは素晴らしい人間のようだったが、そんな唯一の存在も亡くしてしまった。

そんなウォルトを変えたのがモン族のタオだった。
彼らは、種族は違うど過去に虐殺をしたことのあるアジア系の家族だった。しかし、義理堅く、堅実に生きているモン族の家族にいつしかウォルトは心を許します。まるで、自分の息子の面倒を見るかのように、ウォルトはタオに「生きる」ことの全てを教えるのだった。

皮肉なものですね。唯一の身内は彼の元を離れ、過去のトラウマの一つともなっているアジア系の同年代の少年達と接することがウォルトの生きる糧となっていくのです。

ウォルトは言っています。
「どうにもなら身内よりここの連中(モン族の家族)の方が身内に思える。」

そしてラストシーン、迫り来る暴力を同じく暴力でねじ伏せようとしたタオにウォルトは最後の教えをします。

「暴力を暴力で制することの虚しさ」を、ウォルトは自らの身をもって体現したのだ。それはタオにとってある種もっとも残酷であり、一番説得力のある形だったのかもしれません。

過去の過ちに縛られ苦しんでいたウォルトは「死」をもって自らの「生命」を価値あるものにしたのです。

下記、本作のキャッチコピーです。

「俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。少年は知らなかった、人生の始め方を」

あなたはこの言葉に何を感じますか?

『グラン・トリノ』に見る社会の光と影

ここからは一歩後ろに下がり、少し広い目線で見てみましょう。

作品名ともなっている「グラン・トリノ」とは、アメリカの自動車メーカーの”フォード”が国内の限定生産をしていた高級車。

一方、本作の舞台デトロイトのグロスポイントは、日本の自動車工場の参入によりかつて働いていた現地の住民達が去り、多くの移民達が入ってきた街であった。

つまり、本作グラントリノは『古き時代のアメリカの象徴』として映し出しているのです。

ここで一度、アメリカの象徴とも取れる要素を整理してみましょう。※個人の見解です。

・自分とは違う者たちを嫌う口悪オヤジ
主人公は”超”のつく頑固ジジィ。自身は白人で、自分とは違う人種を見るや否や暴言を吐き、中身を知る前から関わりを拒否している。一方、律儀な一面もある。定年まで真面目に働き、リタイア後も庭の手入れや家の事など、身の回りのことは全て自分自身で行うことにプライドをもっている。まさに古き良きアメリカの男を表している。

・暴力が許され、暴力がもの言わす街
舞台のデトロイトは移民が多く、争いごとが多々起こる。欲しいものは暴力で手に入れ、揉め事があったらすぐに銃を取り出す。ウォルトもその一人で、力によってことを収めるシーンがいくつか出てきます。

・強い仲間意識
多人種同士での争いごとも多く起きるだけに、その分”同族”への意識は一倍強く、モン族のギャングにタオが勧誘を受けたのも仲間意識の強さからである。

・裏切りに対する報復
ただし、同族でも裏切りは許されない。自分たちの敵と取れる存在のウォルトと仲良くしているタオの家族を、同族のモン族のギャングが襲撃します。また、自分の家族が酷い目に遭わされたタオも、我を忘れてギャング達への報復を決心します。

さて、ここで一旦まとめましょう。

・得体の知れないものは全て敵
・暴力が圧倒的な力を持つ
・仲間意識と敵意識から生まれる報復

如何でしょうか?

アメリカだけでなく、世界に共通してある問題をそのまま表したような話ですね。

世界では、人種や宗教、国家同士の争い事件が今日も起きています。

まさに、身内以外はみんな敵だと言わんばかりに他人種や他民族のことを悪くいうウォルトもその筆頭とも呼べる存在です。少し偏りがある言葉を選ぶと、アメリカの”負”ともとれる一面を表している主人公でしょう。

では、そんなウォルトがなぜ、全く関係のないタオやスーに命をかけることまでしたのか?

それはタオとの「友情」が国家や人種を遥かに超えた尊い存在であったからです。最後にウォルトはタオに言います。

「お前は大人になった、自慢できる友達だ。お前の人生は今から。俺は関わったことに決着をつける」

きっと、古きアメリカを象徴した頑固ジジィが言うからこそ、尚響くのでしょう。固定概念を取っ払って、相手の本当の姿を知ることで世界は変われるという、クリント・イーストウッド監督の大いなるメッセージが感じとれます。

この映画からすでに10年以上が経ちます。

私たちは前に進んでいるのでしょうか? 考えさせられる作品ですね。

巨匠イーストウッドの拘り

ここで、巨匠クリントンイーストウッド監督について少し。

今や90歳近くのおじいちゃんとなったクリント・イーストウッド。
未だに監督としても俳優としても数々の名作を生み出しています。

その背景にはどんな拘りがあるのでしょう?

クリントンイーストウッド監督の世界観や作品の特徴についてすこ見てみましょう。

POINT1:そもそも、クリント・イーストウッドとは?
クリント・イーストウッドは1930年にアメリカのサンフランシスコで誕生した。今は、「監督」「俳優」として活躍しているイメージが強いが実際どんな人なのでしょうか?

そもそもは1950年に始めた俳優業が始まりだった。以降、1971年には『恐怖のメロディ』で監督業にも挑戦します。また、実は作詞・作曲をするなど「音楽」もできるとのこと。本作でもエンディングはイーストウッド自らが歌っています。更に、なんと1986年にカリフォルニアカーメル市の市長にも当選、一定期間政治家とも活動を行なっていました。ちなみに、当初から朝鮮戦争などの戦争には反対派として声を上げていたみたいです。

俳優・監督・音楽家・政治家、実に多くのことをしており、まるでスーパーマンのような男ですね。しかし、実はどれにも共通性があり、手段は違えど伝えようとしていることは同じような気がします。

イーストウッドのことをより深く知ることで、もっと深いところまで作品のメッセージを読み取れるかもしれません。

POINT2:人間の内面の悩みや葛藤を描く
イーストウッド監督は人間の内心に深く迫る作品が多いのも特徴的です。「ミスティック・リバー」等がまさにそうですが、内面の深層に迫っていくのですが多くを直接語ることがないことがまた特別な余韻を残します。
また、本作は違いますが、『アメリカンスナイパー』『ハドソン川の奇跡』等、実話を元にした映画が多いのも特徴です。これもまた、他人事とは捉えられず共感を深めてくれる要因です。

POINT3:過去に犯した行いへの罪の意識を拭えない主人公
前項に連動しますが、人間の内面とは言っても、特に悩みや葛藤に焦点を当てることが多いです。本作がまさにそうですね。一見強く、ユーモラスなおじいちゃんが主人公ですが、誰がせめているわけでもない朝鮮戦争での行いに苦しみ続けています。
また、アカデミー賞を受賞した名作「アメリカン・スナイパー」でもイラク戦争に従事した最強のスナイパーが主人公ですが、自陣からは英雄と崇められる一方で自身の心は苦しみの奈落に落ちていきます。
一見輝かしい人間にも裏と表があることを深く考えさせられます。

POINT4:西部劇を匂わせる演出
西部劇は無名だったイーストウッドがスターダム街道にかけ上げるきっかけとなったカテゴリー。かつては「夕陽のガンマン」や「アウトロー」を始めとし、名作『許されざる者』でも西部劇を演じています。
本作でも、指で作った銃を懐から取り出して、相手の頭部目掛けて撃ち抜くシーンが登場する。ただの爺さんがやったら「???」で終わるが、数々の西部劇を演じてきたクリントンイーストウッドを知っているファンにはたまらないワンシーンですね。

POINT5:あえて余韻を残す
イーストウッドの作品には「・・・。これで終わり?!」と思う作品がよくあります。また、賛否が綺麗に分かれる作品も多いですね。
つまり、明確な答え(=結末)があるというよりかは、なんとも言えない曖昧な結末の作品が多いのです。そしてその余韻こそが、同監督の最大の魅力でもあるのです。

普通、映画はより刺激的、よりは快適な演出を次々と準備することでお客さんに退屈をさせないようにしています。アクション映画やホラー映画がその典型です。なぜならそれが最もシンプルに楽しませる方法であり、逆に”空白”が開くことで観客が退くことを恐れるからです。

しかしイーストウッドはその「余韻」を実に贅沢に、自信を持って演出します。そしてその余韻こそが、「なぜだ?!」「続きが知りたい!」という私達の創造性を豊かにするのです。『ミリオンダラーベイビー』等がその典型ですね。

普通は中々できることではないのですが…すでに多くの人からの絶対的な支持を得ている巨匠だからこそ、その領域に踏み込めているのだと思います。

如何でしたか?

これを見ると、本作『グラン・トリノ』がイーストウッドの集大成と呼ばれている理由もよくわかりますね。

イーストウッド監督の作品の中にはテーマが深く重たすぎて見辛い映画もありますが、本作は深いテーマの割にはテンポよく進み笑いもあるため多くの方に見やすい作品だと思います。是非、イーストウッドワールドを感じてください!

受賞歴

・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 男優賞(2010年)
・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 オリジナル脚本賞(2008年)
・日本アカデミー賞 最優秀外国作品賞(2010年) 等

賞が多すぎてどれがすごいのかわからない….」という方はこちら!
 👉 映画賞ってどれがすごいの?

クリント・イーストウッド監督の別作品

映画監督:クリント・イーストウッド
・2019年:運び屋(監督/製作/出演)
・2018年:15時17分、パリ行き(監督/製作)
・2016年:ハドソン川の奇跡(監督/製作)
・2015年:アメリカン・スナイパー(監督/製作)
・2014年:ジャージー・ボーイズ(監督/製作)
・2012年:人生の特等席(製作/出演)
・2012年:J・エドガー(監督/製作)
・2011年:ヒア アフター(監督/製作/音楽)
・2010年:インビクタス 負けざる者たち(監督/製作)
・2009年:グラン・トリノ(監督/製作/出演)
・2009年:チェンジリング(監督/製作/音楽)
・2006年:硫黄島からの手紙(監督/製作)
・2006年:父親達の星条旗(監督/製作/音楽)
・2005年:ミリオンダラー・ベイビー(監監督/製作/音楽/出演)
・2004年:ミスティック・リバー(監督/製作/音楽)
・2002年:ブラッド・ワーク(監督/製作/出演)
・2000年:スペース・カウボーイ(監督/音楽/出演)
・1999年:トゥルー・クライム(監督/製作/出演)
・1998年:真夜中のサバナ(監督/製作)
・1997年:目撃(監督/製作/出演)
・1995年:マディソン郡の橋(監督/製作/出演)
・1993年:パーフェクト ワールド(監督/出演)
・1992年:許されざる者(監督/製作/出演)
・1991年:ルーキー(監督/出演)
・1990年:ホワイトハンターブラックハート(監督/製作/出演)
・1998年:真夜中のサバナ(監督/製作)
・1997年:目撃(監督/製作/出演)
・1995年:マディソン郡の橋(監督/製作/出演)
・1993年:パーフェクト ワールド(監督/出演)
・1992年:許されざる者(監督/製作/出演)
・1991年:ルーキー(監督/出演)  等…

「そもそも映画作りに誰が一番重要なの?」という方はこちら!
👉 映画作りのキーマンは誰?

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