映画『ルーム』あらすじ・解説・レビュー

こんな方へ
・つらいことがあった人
・悩みがあって前向きになれない人
・トラウマがあって、なかなか前に進めない人
〔 こんな方は控えてください… 〕
・この作品がスリルがある監禁映画だと思っている人(趣旨が異なります)
本サイトでは気分や目的別にカテゴリー分けをして作品をご紹介してします。他の作品も是非ご覧下さい

作品情報・あらすじ
- 作品名(原題):ルーム(ROOM)
- 制作年度:2015年
- 上映時間:118分
- 監督(制作国):レニー・アブラハムソン(アイルランド・カナダ)
- 主な受賞歴:アカデミー賞(主演女優賞)
小さな部屋に監禁され続けた母子の再生の物語
主人公は5歳の男の子ジャックと、その母親のジョイ。
彼女たちは、生活に必要な最小限の設備だけがある小さな部屋の中で暮らしている。
ジョイは7年前(17歳)から中年男の”オールドニック”に監禁されており、ジャックは生まれた時から一度も外に出たことがない。
オールドニックは、週に一度だけ日用品を持って部屋に訪れるが、それ以外に部屋の鍵が開くことは一度もない。
いつになっても外に出られることのない絶望的状況の中、ジョイにとってはジャックの存在だけが救いとなり、希望を失わずに生きてくることができた。
そんなある日、ふとしたことがきっかけとなりジョイは部屋から脱出することを決断する。「部屋の外の世界」を知らないジャックに本当の世界や自分たちの置かれている状況を話し、部屋からの脱出を計画し始めるのだが…。
本作、「ルーム」自体はフィクションだが、現実に2008年にオーストラリアで発覚した”フリッツル事件”の影響を受けて作られた作品。
現実には信じがたい残虐で悲しい事件だが、消し去りたい過去と向き合いながらも一歩ずつ成長していく母子の姿を繊細に描いている。
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解説・レビュー ※ネタバレ含む
自由とは何か

本作は監禁された部屋から脱出するまでの前編と、外の世界に解放された後の2人の成長を描く後編から成り立ちます。
普通の映画であれば「監禁されていた母子が部屋からの脱出に成功!」で終わるはずですが、この作品の本質は「外の世界に出た後」にあります。
その本質とは「過去と向き合いながらも成長していく母子の姿」です。
当然、狭い部屋に監禁されている時と、解放された外の世界では、後者があるべき姿であることは言うまでもありません。
しかし、部屋の中にいた時のジョイにとって生きる目的は明確でした。
それは「ジャックを守る」こと。愛するジャックを守るためには絶対に死ねない、何でもできると、絶対的に強い”決意”を持って生きていたのでした。
しかし、目的が達成され、ずっと待ち望んでいた”自由”な世界に出た矢先、ジョイは容赦なく降り注ぐ世間の視線から自責の念にかられ、ついには自分で命を絶とうとするのです。
不自由な状況下では必死に生き抜こうとする反面、自由になるが故に自ら追い込むジョイ。
そこには、人間が生きていくことの本質が見えてきます。
一見、外から見たら順風満帆で、羨ましがられるような存在が、自らの選択で命を絶ってしまうことがあります。
ちょっと考え方を変えればやり直せるのに、何を捨てればきっと幸せになれるのに…自分の中でネガティブな意識が誇大化していき、自分のことを傷つけてしまう。
本当の自由とは何か?
物理的な自由があっても、心が解放されない限り本当の満足は得られません。
自由とはきっと、我々のもつ”意識”の中に隠れているのでしょう。
その大きさが大なり小なり、誰しもに思い詰める経験は必ずあります。
本気で悩んでいる本人にとっては、「別にいいや」なんて安直な考えはできないかもしれませんが、本気で生きようとしている2人の姿にはどこか共感できることができると思います。
「大丈夫。そんなに悩まなくても良いんだよ」
と、そんな声が聞こえてくるような、優しい作品です。
母と子辿るそれぞれの再生の道

本作ルームは残酷な監禁事件をモデルにしながらも、犯人のことや監禁時における過去の世界にはほとんど触れていません。正確には、過去の記憶として話に出てくることはありますが、ほとんど描写されていないのです。
それは、母(ジョイ)と子(ジャック)が”立ち直る姿”ことに焦点を当てた物語だからです。
監禁時からの脱出後まで、ジョイとジャックが現実と向き合い立ち直るまでの関係値はまるで真逆です。
母親のジョイはきっと使命感が強く、曲がった事が嫌いな人間だったのでしょう。彼女の過去の遍歴や、脱出後の父とのやりとりの中からもその片鱗が読み取れます。
そんなジョイにとって、ジャックは唯一の”生きる希望”だったのです。その目的が果たされた外の世界では、心ない人たちの冷たい視線と自責の念から自分を保てなくなってしまいます。
一方で、注目すべきはジャックの成長です。
当然ながら、生まれた時から部屋の中で育ったジャックは外の世界を知る由もありません。
ジョイから外の話を聞かされた時、また外の世界に初めて足を踏み入れた時、自分が信じていた世界とのギャップに戸惑い、新たな世界に触れることを避けようとします。
しかしそれも束の間、じぃじ(ジョイの義理の父親)やばぁば(ジョイの母親)の努力のより、ジャックは徐々に心を開きすぐに現実の世界へと適応していきます。
ジョイが自殺を図った時にも、ジャックは自分の髪の毛を送ってあげることでジョイのことを勇気づけ、「Pick for the both of us(僕たち(私達)のためにしっかりしてよ!)」といいます。
この言葉は、部屋を脱出するときにジョイがジャックに言ったことです。
つまり、前半部は「ジョイに依存していたジャック」と、後半部は「ジャックに依存しているジョイ」とで立場が真逆になっているのです。
ここからは、人と人とが支えあうことの素敵な一面が見えてきます。
言うまでもなく、ジョイは責任感が強く、本当に素敵な人間です。
ジョイがこのような人間でなければ、過酷な環境の中でジャックが長く生きることが無かったのでしょう。
しかし、外の世界に出て、そこ知れぬ苦しみをジョイが抱えた時は、ジャックの成長がジョイを救うのです。むしろ、部屋の中で生きている時からずっとそうだったのかもしれません。
大人と子供、どちらが優れているということではなく、どちらも生きていく上で必要な存在だということです。
社会の中でも生きているとどうしても人は優劣をつけたがります。
しかし、相手がどんな人間であろうと、どこかで自分も救われている一面もあるのかも知れません。
逃げるのではなく、受け止める強さ

そして、何と言っても心に残るのがジャックが部屋に別れを告げる最後のシーンです。
一連の騒動があり、やっと落ち着きのある生活を取り戻した後に、突如ジャックが「一度部屋を見に行きたい」と言うのです。しかし、ジョイはそれを嫌がります。
当然のことです。人生で最悪な思いをした場所に自ら足を踏み入れようとする人はいないでしょう。
しかし、ジョイはジャックの意思を尊重し、二人は部屋を訪れるのです。
久しぶりに部屋を見たジャック。当たり前のように過ごしていた部屋が、外の世界と比べてあまりに小さいことに戸惑います。
すると、「ドアが閉まってないと部屋じゃない」とジャックは言います。「ドアを閉める?」と聞き返すジョイは、「いいや」とジャックは首を横に振るのです。
そして、自分がお世話になった家具の一つ一つにジャックは「バイバイ」を告げるのです。
二人が全てを受け入れて、新たな世界に踏み出した瞬間です。
監禁されていた部屋から脱出した時点で”物理的”には自由になった二人ですが、その心は囚われているかのように縛られていました。
しかし、決して忘れることのできない最悪の記憶や過去を、逃げるのではなく受け止めることにより、止まっていた二人の時間はようやく動きはじめたのです。
この映画のキャッチコピーは『はじめまして、世界』です。
あなたはこの言葉に何を感じますか?
悩みがあってどうしても前向きになれな人。
何か辛いことがあった人や、明日への希望が見出せない人には是非お勧めしたい作品です。
受賞歴
アカデミー賞(2016年)
主演女優賞
ゴールデングローブ賞(2016年)
映画部門 主演女優賞
その他受賞歴
英国アカデミー賞・第69回英国アカデミー賞・全米映画俳優組合賞ミー賞 等
賞が多すぎてどれがすごいのかわからない….」という方はこちら!
👉 映画賞ってどれがすごいの?
レニー・アブラハムソン監督の別作品
映画監督:レニー・アブラハムソン
・2016年:ルーム(監督)
・2014年:FRAND フランク(監督)
・2012年:リチャードの秘密(監督)
・2007年:ジョジーの修理工場(監督)
・2004年:アダムとポール(監督)
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👉 映画作りのキーマンは誰?
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